40代半ばのある朝、僕は洗面所の鏡の前で、歯ブラシをくわえたまま動けなくなった。
「……あれ?」
寝癖でも、光の加減でもない。『地肌の主張』が、昨日より確実に強まっていたのだ。
正確に言えば、前髪の奥の方から、ほんの少し、肌色がやけに存在感を持ってこちらを見返してきた。まるで、長いあいだ押し入れの隅で静かにしていたはずの古い書類が、突然ずるりと姿を現すように。「忘れてもらっては困りますよ」と訴える、そんな色だった。
40代の男性にとって、髪は最後の砦である。体力は落ちる、記憶力は怪しくなる、胃腸は繊細になる。そんな中で、髪だけは「まあ、まだ大丈夫だろう」と根拠のない自信で支えられている。
ところがその朝、僕の自信は、ドライヤーの風とともに、見事に吹き飛んだ。
「いや、これはたまたまだ」
「ストレスが溜まってただけだ」
そう自分に言い聞かせながら、会社に向かった。でも、会社に着いてからも、気になって仕方がない。コピー機を操作しながら、ガラスに映る自分の頭をちらりと確認してみたり、会議のホワイトボードが反射した姿をさりげなく見たり……。
鏡で確認するわけでもないのに、視界の端に「地肌」の二文字が居座り続けた。
薄毛というのは、腰痛や関節痛と違って「痛いです」とアピールしてこない。だから始末が悪い。気がついたときには、すでに進行している。「急に薄くなった気がする」と思うのは、たいてい急ではなく、見ないふりをしてきた時間の積み重ねが爆発する瞬間なのだ。
僕も例にもれず、その朝を境に、焦りがぐんぐん育っていった。
ドラッグストアの育毛剤コーナーをうろついては、「これでいいのだろうか」と迷い、ネットで情報を調べても「AGA」「男性ホルモン」「遺伝」などの単語が踊り、ますます混乱する。
40代男性というものは、仕事ではそこそこ冷静なのに、自分の髪のこととなると妙に感情的になるのだから不思議だ。
そんな僕を救ったのは、以前の職場で一緒だった先輩。
久しぶりに会ったその先輩は、以前より明らかに髪がふさふさしていた。もともと薄毛気味だと本人も公言していたのに……だ。
「先輩、どうしたんですか。その……すごく元気そうですね、髪が」
勇気をふりしぼって聞いてみたところ、彼はあっけらかんと言った。
「AGA治療だよ。無料で相談できるから、とりあえず行ってみたんだ」
その瞬間、僕の中の『抵抗』が音を立てて崩れた。
AGAと聞くと、なんとなく敷居が高い気がしていた。高額、強引な勧誘、専門用語の嵐……そんな不安が頭の中で勝手に膨らんでいた。
でも、先輩は続けた。
「話を聞いただけでも気持ちが楽になるし、治療が必要かどうかもちゃんと説明してくれる。無理にすすめられたりもしないよ」
僕は、急に未来に光が差したような気がした。
あの朝、鏡の前で立ち尽くした自分を思い出しながら、「何もせずに悩む時間のほうが、よほどもったいないかもしれない」と思った。
そして、意を決して、オンラインの無料カウンセリングを予約した。
専門家に相談し、自分の薄毛のタイプや進行度、治療の方法を丁寧に教えてもらったとき、不安が半分以上すっと消えたのを覚えている。
治療を始めるかどうかは自分次第だが、「知る」ことで心のざわつきが落ち着くのだ。
治療を始めて数ヶ月。
今の僕は、あの頃のように洗面所で固まることはない。むしろドライヤーの風に合わせて、髪が以前よりしっかり動くのを見るたび、「よく戻ってきてくれたな」としみじみ思う。
もし今、あの朝の僕と同じように鏡の前で立ち尽くしている40代の男性がいるなら、伝えたい。
悩むのは自然なことだし、恥ずかしいことでもない。でも、一人で思い詰める必要もない。
まずは無料で専門家に相談してみる。それだけで、未来が少し明るく見える日が、きっと来る。
※本記事は個人の体験をもとに作成したものであり、効果には個人差があります。
※治療は必ず医師の指導のもと行ってください。
※薬の使用可否や副作用リスクは個人の健康状態によって異なります。


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